6/7 とやまを元気にする「地域おこし協力隊研修会」開催報告!

都市部の若者らが地方に移住して、活性化に取り組む「地域おこし協力隊」。制度の創設から10年目を迎え、全国で活躍する協力隊は5000人を突破。富山でもこれまで60人が活動してきました。

2019年4月現在、富山県内では12市町、39人の協力隊が活動中です。隊員のミッションも、定住・移住、観光、農泊、農業と様々。

今回は、そんな地域おこし協力隊の活動における「困りごと」にフォーカスし、隊員が抱えている「困りごと」「疑問」を共有しながら、協力隊OBでもある講師の方から解決策をアドバイスしてもらうワークショップを開催しました。

講師は、新潟県十日町市の元・地域おこし協力隊であり、現在、NPO 地域おこし事務局長の多田朋孔(ともよし)さん。過去にも協力隊研修で富山に来てくださったことがあり、著書「奇跡の集落: 廃村寸前『限界集落』からの再生」でも知られています。対する参加者は、県内各地の地域おこし協力隊、行政、協力隊受け入れ地域など14名。

 

前半は、多田さんによる講義、休憩を挟んで後半は参加者による自己紹介、続いて、ワールドカフェ形式のワークショップ「活動の上での困りごと、あったらいい研修について考える」を行いました。

多田さん、学生時代は応援団長も務めたというバリバリの体育会系と思いきや、物腰は柔らかく、とはいえコンサルティング会社ご出身だけあって、物事の捉え方は冷静かつ的確です。

 

第一部 講演「地域への入り方」
*前半の多田さんの講義で話されたポイントを以下、まとめていきます。

・多田さんの住んでいる地域紹介、新潟県十日町市は人口52千人ほど。十日町市はこれまで地域おこし協力隊を62名採用し、現役隊員が8名、任期途中で去った人が11名、定住者数30名(定住率70%)、「いい例から悪い例(協力隊がうつ病になったとして、市と国に賠償責任を求めた裁判)まで、幅広くある」とのこと。

・多田さんの担当した飛渡(とびたり)地区(14集落、163世帯、495人が居住)は、十日町市にある14の集落からなる地域。そのうちの一つ、多田さんが住む池谷集落(9世帯、21名)は、10年間で10名の協力隊を採用し、現役は現在1名、十日町市内定住8名。

・池谷集落との出会いは、多田さんがサラリーマン時代、前職で勤めていた会社が社会貢献の一環で、JEN(国際NGO)を通じて、中越大地震をきっかけに池谷集落の復興支援を行っていたことがきかっけ。活動を通じて、移住を検討するようになり、奥さんに相談したものの、当初、奥さんは、田舎暮らしにはまったく興味なし。(収入面が絶たれることも大きな問題)。だが、地域おこし協力隊の制度を使って移住すれば、収入面、家の面でも確保されることで説得し、移住が実現した。

 

あなたにとって「地域おこし、とは何ですか?」

多田さんによる参加者への投げかけ「地域おこし、って皆さんにとって何ですか?」。各テーブルで5分ほど話し合い。テーブルからは「地域に笑顔が増えること」「おばあちゃんが元気になること」などがあげられた。

 

協力隊はまず「地域おこし」のイメージを持つ
・前提として、「農村が閉鎖的だと移住者は呼び込めない」。集落に強烈な危機感があると、地域の「諦め」につながる(何をやっても無駄と思ってしまう)。池谷地区も同じで、「村をたたむか?」の瀬戸際まで追い詰められた。そこで、なんとか村を残したい人々が立ち上がった。

・集落に外部との交流があれば、外部の人が地元にとって「当たり前の価値」に光を当ててくれる。地元の良い点を見つけてくれるのは、よそ者である都会の人間。そこから、自分の集落の価値に気づき、「この集落を残したい」「集落への自信」が生まれ、ここに住みたいと思う人が出現する。そこに住まい、仕事があれば移住につながる、というイメージ。

外部との交流 → 集落への自信 → 住みたい人の出現 → 仕事住まいの確保 → 移住

 

 

多田さんの持論、「子どもが生まれることが一番の地域おこし」。何より、集落のおじいちゃん、おばあちゃんが笑顔になる、とのこと。高齢化が進む集落で新しい命が生まれることは、集落にとってのパワーになることは間違いないですね。

 

地域おこしの5段階
地域に溶け込む → 小さな成功体験を起こす → 活動の輪を広げる → 組織・事業立ち上げ → 持続可能な状態

 

北原保育園の活動
・平成26年の3月に廃園が決定。父兄から存続活動が起きる。多田さんも勿論、存続させたいが、「協力隊の立場」と「父兄の立場」2つの立場に立たされる。

→廃園にしたい役場からは、協力隊としては活動に関わらないよう言われる。
結果、多田さんは「協力隊」としてでなく「いち父兄の立場」から園の存続に関わることを役場に伝え、了承を取った。

 

「頼まれごとに対しNoと言わない」
・様々な「頼まれごと」に対し、日程が重なっている場合を除いては「できるだけ引き受ける」のがポイント。そうすることで、いざ、こちらから何かを頼むことが起きた時、引き受けてもらいやすくなる。

 

災害復興とびたりフェスティバル
・観客数450人、チャリティ寄付金額:182332円は全額市に寄付・あくまで実行委員長は地域の人。最初はそれだけ人が来るのか?という懸念もあったが、ふたをあけてみたら盛況。地域側から生まれた「こんなことをやりたい!」を実行してみた結果、「やってよかった」という成功体験につながった例。

 

多田さんの現在の活動
NPOとして営農も開始。池谷地区で加工品開発(外部委託)。米と野菜を作り販売もしている。
・協力隊受け入れ地区、受け入れ側の人々のための「情報交換会」を実施。
・協力隊の新規事業作り。起業支援

 

 

村の人からの発案で「3年後のビジョン作り」20153月の時点で実現した将来ビジョン
・分校の体育館を多目的にホールにする(2010年度に体育館を改修)
・ムラ全体を法人化(2012年度にNPO法人化、もともとの集落の人で希望者は全てが理事に)
・海外からも人が来る
・米は全部、直販(個人への直販とお米屋さんへの直接出荷のみ。農協には一部、付き合い出だしている人以外は出していない)
・集落営農
・加工品開発
・若い人の住宅

 


多田さんの失敗ベスト3「集落では、話す順番が大切」
協力隊時代の失敗エピソード、第一位は、議員出馬騒動。マスコミに持ち上げられて市議選に出馬と記事に書かれた。地域の人からは「聞いてない」と猛反発。「これまで築き上げた信頼が一瞬でパーになってしまった」という苦い経験。何よりも大事なのは、「話す順番」と多田さんは力説。

 

行政は協力隊の「ここがヘン!」、協力隊は行政の「ここがヘン!」と思っている。お互いさま!
新潟県地域おこし協力隊ネットワーク会議「ここがヘンだよ!協力隊員」では、行政側から協力隊に対し、
*書類の提出が遅い 
*車の事故が多い(多田さんも雪道で車を大破させた経験がおありだとか!)
*予算(お金の使い方)がわかっていない 
*時間にルーズ 
*一般常識をもってほしい 
*地域の折り合いが悪い 
*そもそも、なんでここに来たの?など疑問があげられた。

対する「ここがヘンだよ!行政職員」では、協力隊側から行政に対し、
*部署間の連携・情報共有がない 
*地域への周知・説明不足 
*方針・ビジョン・方向性が不明確 
*受け入れ地域に丸投げ 
*行政のシステム(返事が遅い)などがあげられた。

 

協力隊として大前提のスタンス
・地域・行政・協力隊、それぞれが望むことを明確に
・地域、行政、協力隊、それぞれが望むことで、3つの「望み」が重なる部分を重視する
・協力隊は「自分がどうしたいのか?」を明確にする。「自分探し」をしているとあっという間に3年間は終わってしまう。

 

協力隊が行政とのコミュニケーションで大切なこと
・「問題提起」と「提案」までしてしまう。その提案が、町の望む方向(総合戦略、例えば、人口を増やしたい、怒涛の人の流れを作るetc)に沿っていれば、その提案は、優先順位が「高く」なる。

問題提起 → 行政側が解決方法を考えてくれる余裕はない

提案 → 行政側も忙しいので、優先順位次第、予算や承認の手続きが必要
※漠然とした提案でなくその通り通りにやればいいというレベルまで具体的に        

提案して自ら実行 → ようやく実現、実績を積み重ねることでより、やりやすくなる
※補助金を一緒に取って予算まで作ってしまえば完璧

 

行政の意思決定の仕組みを知る(時間がかかる)
地域の人・協力隊員 → 担当者 → 上司の決裁 →  首長 → 議会(年4回) → 担当者

 

地域おこし協力隊として重要なポイント
・地域に溶け込んだ活動の進め方をする
・「地域のやりたいこと」と、「自分のやりたいこと」を一致させる
・自分のやりたいことが出来る地域の組織の中で自分の役割をはっきりさせる
・必ず地域のキーマンと逐一、相談しながら事を進める
・溶け込むためのポイント(地域の物差しで評価を得る)
*肉体労働で活躍する
*立派な農作物を作る
*一芸を持つ
*消防団に入る
*子どもの保護者同士の交流


地域おこし協力隊を受け入れるにあたっての重要ポイント
【行政への提案】
 ・自治体が協力隊をどのように活用したいか戦略を持つべき
 ・現場の意見を踏まえて柔軟な対応をする
 ・協力隊は採用される人に大きく左右されるので、採用時点で妥協しない
  *田舎暮らししたいタイプ
  *社会貢献したいタイプ
  *自分探しタイプ
  *生活保護タイプ

 ・協力隊がチームで動けるように配置する
 ・モデルとなる地区を選定して注力し、その後、取り組みの輪を広げる

 

起業のポイント
・他の人が参入していない分野に入る(ゲストハウスがなければ、それをやるのもアリ)
・適正な価格で行う(協力隊時代は無償で引き受けても、いつまでもボランティアではだめ)
・大事なのは「地域の人からの信頼」(何かあった時、助けてくれたり物件を紹介してもらえる)
・協力隊の任期終了後の「自分の人生のイメージを持つ」こと。漠然でもいい。

 

 

第二部:参加者自己紹介&ワークショップ「活動の上での困りごと、あったらいい研修について考える」

参加者の自己紹介に続いて、「困りごと」「あったらいい研修について」ワールドカフェ形式で意見交換。様々な視点から意見が活発にかわされました。

付箋に、たくさんのキーワードが書かれていきます。

各テーブルから意見発表タイム。

以下、活動における困りごとベスト3

1

コミュニケーション問題(受け入れ先、行政、協力隊、外部人材)

2

業務範囲(あいまい、仕事量、担当でない雑用や役所の仕事の押し付け)

3

協力隊の任期後の進路

 

あったらいい研修ベスト3

1

受け入れ側(団体・役所向け)研修

2

成功地域を実際に見に行く(視察、出張)

3

OB・OG会(OBOGに進路相談したい、OBOGによる「私の進路」講話を聞きたい)

 

 

挙げられた「困りごと」に対する、多田さんの解決案

①コミュニケーションにおける問題

・地域、行政、協力隊、関係する三者が定期的に集まって、定期的に活動について棚卸しをする。話しをすることで三者の目線を合わせる。当事者だけでなく、客観的に見れる第三者的な立場の者が立ち会うとベスト。協力隊は「3年後を見据えて、こうした活動がしたい」と先を見据えた話しをすることも大事。

 

②任期後の進路が心配

2013年に団塊世代がごっそりと抜けたので、今や空前の人手不足。仕事を選ばなければ困らない。協力隊を卒業後は「就職」という選択肢も一つ入れる。自分の「やりたいこと」だけで生計を立てるのは、誰でも難しい。その場合は、趣味としてまず週末起業的に行い、徐々に軌道に乗ってきたらそちらの比重を増やしてゆくのも手。協力隊は3年の助走期間があるので、考え方によっては有利な立場にある。

・「継業」を探しているケース:仕事以外で知り合いを増やすと、思わぬところで仕事のクチが広がる可能性もある。経営者の中には、この先、自分の仕事を移住者に継いでもらいたいと探している人もいる。

 

③雑用ばかり、押し付けられる場合

頼まれる雑用に対し、「これは協力隊の仕事でない!」と思っても「私、やりません!」とつっぱねるのではなく、最初は我慢してでもやること。そうしていれば結果的に自分への評価が上がる。相手が「いつも頼み事ばかりして申し訳ない」と思っているタイミングで、こちらからお願いごとをするとスムーズに進むことも。感情的になって「協力隊としてわざわざ、こんなことをしに来たのではない!」と言ってしまうと感情的にこじれる可能性がある。

 

④活動費の使い方があいまい

・市町村によって活動費の対応がまちまち。場合によっては「予算がない」と言われるところもある。ただ、予算については役場と交渉して「なんとかなる」話しでもなく、役場から「予算がない」と言われたらお手上げ。十日町は協力隊の人数が多いので、残りの活動費を公表してほしい、と訴えて実現したが、それはレアなケース。

・そもそも、「活動費を使って何がしたいのか?」が大事。「活動費は協力隊の既得権益」という姿勢で話し合うと失敗する。たとえば、活動費を使って「やりたい活動」がある場合、他の補助金を使うことが可能な場合も(加工所や材料費など)。予算を決めるのは前年の夏なので、今、この時点で予算がない、と言われたら、そこで、「ごねる」のでなく「活動費を使ってこんな活動をしたい。そのために必要なお金をどうやって得られるだろう?」に発想を変える。「隣の芝生(他の市町村)は青く見えるもの」。

 

⑤仕事量の調整が難しい(最初は仕事量が少ないが、徐々に、仕事がどんどん増える)

・3年の任期終了後、はじめからその土地を離れるつもりだと、さじ加減が難しい。地域の人との「飲み会」も、協力隊の活動か、どうかは別に、純粋な仕事ではない曖昧さがある。ただ、任期終了後も、その土地に引き続き住むつもりならば、どのような行動を取ったらいいのかが見えてくるはず。

・協力隊時代、一生懸命にやってきたことは、その時は忙しくて、ここまでやってもお給料は変わらないのに、と思うことがあっても、後になってジワジワと「プラス」になってくる。

 

⑥「お客様扱い」をされる

・協力隊の間は、「お客さん」と思われても仕方ない。多田さんの場合、任期が終了し、4年目になってようやく「地域の人になったね」と言われた。3年経って、その土地に残らなければ信用されない。逆に、終了後もその土地に残れば地域の人の目も変わってくる。

・協力隊の3年間、地域の人からは「役所からお金が出ている」という目で見られている。協力隊のお給料は、国から出ていることを羨ましくと思っている人々がいるのは事実。隊員にしたら大した金額と思わなくても、「あれだけお金をもらっている」という目で見る人も。議員の中には「協力隊を入れるよりも、地元の地域雇用を作った方がいい」と考えている議員もいることを念頭に。

様々な「困りごと」も、第三者の目で客観的にアドバイスをもらうと、思った以上に解決の糸口が見えてくるものです。この日は長時間にわたって、多田さんより貴重な講演とアドバイスをいただきました。改めてありがとうございました!

地域おこし協力隊に特化した研修会は、今後も行われます。活動の上で必ずプラスになる、何らかのヒントを得ていただける内容を企画していきますので、現役隊員の方はぜひ積極的なご参加をご検討いただけますよう、よろしくお願いいたします!