第3回 とやまを元気にする「地域おこし協力隊研修会」2020/10/12~13開催

R02年度、3回目となる協力隊研修は「元気とやま地域サポート人材研修」との合同企画として1泊2日で開催。中山間地域での地域づくり、若手活用や協力隊制度にも詳しい春日俊雄氏(荻ノ島ふるさと村組合長)、田口太郎氏(徳島大学准教授、※リモート出演)、多田朋孔氏(NPO法人地域おこし事務局長)のご三方を講師に迎え新潟県柏崎市の「荻ノ島かやぶきの里」で開催されました。

今回は「若者を巻き込みながら集落を持続・発展させる力」を研修テーマに、地域おこし協力隊、地域活動従事者、行政関係など10名が参加しました。

◆1012日(月)
(1)「荻ノ島かやぶきの里」集落散策(10451130
荻ノ島ふるさと村組合長、春日俊雄さんに荻ノ島かやぶきの里集落についてご説明を頂く。

◎集落の歴史について
荻ノ島集落の特徴は茅葺き屋根が点在する「環状かやぶき集落」と呼ばる独特な家屋配置にあり、中央に田畑、その周りを囲むように約40軒の民家(うち茅葺き家屋は半数)が配置されている。一周が約800m、約30分で全戸を廻ることができる。ピーク時は101世帯、520530人が住んだが、現在は25世帯54名が暮らす。
 天台宗の日蓮上人の孫弟子が建てた寺があり、1313年の創建であることから集落は鎌倉時代後期以前から成立していたものと思われる。かつて、青苧(あおそ)と呼ばれる麻の織物が盛んで、公家や上流武士など特別に身分が高い人のための着物に使われた。質の良い青苧は田んぼの売上と並ぶほど大きな収益をもたらした。

◎現在の集落について
 「持続可能なものにこそ価値がある」とする考え方をベースに、約18haの田んぼで米を作り持続的に買ってもらいながら、耕作放棄地が出ないよう田んぼを守っている。ここで作られるコシヒカリ米は湧き水を使っており甘みがあって美味しいのが売り。神奈川県にある社会福祉法人と提携し、「この値段だったら農家が赤字を出さず田んぼを続けていける」という値段を設定、販売することで、競争原理に翻弄されない、持続可能な農業の継業に取り組んでいる。65歳以上が人口の50%を占める一方、インターンシップ等を通じて若い人の移住者がも増えており(2020年時点で5名)、1歳児が2人いるなど、集落に活気をもたらしている。

◎荻ノ島「かやぶきの宿」として
茅葺き屋根の二棟を宿泊所としてオープンして28年目、のべ3万人が宿泊してきた。春日さんによれば、「風景(=地元の人々の生き方が現れる)」を大切にしており、「大勢の人でなく、共感する人に来てほしい」。

(2)道の駅じょんのびの里高柳 12001210 (売店見学)

「じょんのび」とは「ゆったりのんびり芯から心地良い」という意味の言葉。平成6年、滞在型交流施設としてスタート、平成21年に大型リニューアルした。地元の野菜や山菜・食材を扱う「やませみ庵」、豆腐、がんも、蒟蒻等製造する工房百菜館があるが、現在はコロナの影響により、販売場所を宿フロント横に移動、縮小して営業を続けている。一番人気はお饅頭。

(3)講義 13451645 (荻ノ島かやぶきの里)
3名の先生による自己紹介+鼎談(ファシリテーター:田口太郎先生)

 春日さん◎自己紹介
昭和60年から地域づくりにかかわる。きっかけは高柳町役場総務課時代、当時、島根大学名誉教授だった安達生恒先生と知り合ったこと。「住んでよし、訪れてよしの高柳づくり構想(じょんのびの里づくり構想)」を策定し(平成2年)、造園を専攻していたことからじょんのび村のレイアウトも考えた。結果、「地域づくりに関われば、かかわるほど地元が好きになった」。

今でこそ高柳町は「観光による地域づくり」を打ち出しているが、当初、地元の人に観光の話をしても理解してもらえない、分かってもらえなかった▷新しいことを始めるとはそういうもの。

反対派の年配 vs賛成派の若者の対立は深い溝となり、「かやぶきの里構想」は村を二分した。結果的に僅差でかやぶきの宿を始めることになり、オープンからたくさんの人が訪れてくれた。村人にすると「農村に人が来るなんてあり得ない」が常識だったがそれが当然になった。取り組みから28年経ち、平成12年、観光づくりで優秀賞を受賞(金賞は由布院)、自分たちのお陰で賞を取れた、と当時の町長から認められ、公に認めてもらえるようになった。

田口先生◎自己紹介
荻ノ島へ初めて訪れたのは1999年。MITと合同で荻ノ島に合宿、後に春日さんからの依頼で「じょんのびの里構想」が生活レベルでどのように影響しているかを調査するため、調査を行った。

・調査概要▷地域づくり10年を振り返って、ふるさと開発協議会メンバー、商工業者、女性など62名に対してヒアリングを行い記録としてまとめるオーラル・ヒストリー(口述歴史)を行った。調査中、「高柳の人間相関図」を書いてもらい、そこからエンジン、ブレーキ、潤滑油など地域づくりに必要な役割分担が見えてきた。

・地域が主体的に取り組むために▷集落点検で「見える化」が必要
「見える化」の必要性▷地域づくりは住民全員の取り組みが大事だが、一部リーダーの活動になりがち▷住民が参加しないのは、自分たちの地域の将来に「ピン」と来ていないから▷課題は感じていても具体的に何をしたら良いかわからない。
→自分たちの地区の将来を具体的にイメージすることで、将来の実感を得る仕掛けづくりが必要

20003月「これまでの10年、これからの10年」として町民シンポジウム開催。
荻ノ島のfbページ(英語ver.)も田口先生が作成した。

多田さん◎自己紹介
多田さんの住む十日町市は人口51000人、多田さんの活動する池谷集落は昭和30年、37211人が住んでいたが平成21年には613人まで減少した。現在は多田さん一家を含め10軒、0~14歳以上が30%を占める。NPO法人地域おこしでは事業の柱のひとつとして米作りを行っており、魚沼産コシヒカリ「山清水米」という名前で販売している。ふるさと納税の返礼品になったこと、youtubeによる動画配信などが功を奏して打ち上げが2倍に増えた。

◎鼎談
「地域おこし」「若手の巻き込み方」「中山間地域づくり」などをキーワードに3者による鼎談を行った。

 春日さん
・地域づくりを始めた際、当時は自分の「思い」が強く、人からブレーキをかけられても前に進みたい気持ちが強かった。同じ思いの人が自分一人でなく何人か仲間がいてくれたことがラッキーだった。
・行政職員時代、定住者を増やすための施策を行ったが人口減し結果を出せなかった時は1週間落ち込んだ。何がダメだったのかを考えた結果、どんなにハードがあってもソフト面がしっかりしていないと定住には結びつかないことを実感した。新築の家が年に2棟しか建たなかった年があった▷「高柳が暮らす町として選ばれていない」。このままでいいのか?と住民に気づかせる知恵を出せるか?
30年地域づくりに関わってきて、自分にはない知恵を持っている人から教わることがたくさんあった。「やれ」と言われてやるより「自分で気づく」「自ら動く」。そのための工夫が必要。
・地域づくりでキーとなる人は底力を出すが、関わる一人ひとりが「底力を出して生きる時代」。自分は立場上いろいろな人の話を聞けたことはラッキーだった。たとえば、富山の薬売りは地域に入っていって、その住民の話を聞きながら売薬をしていた。ある意味、「情報をつなぐ」役割だったとも言える。
・思うようにならないのが「自然」であり、思うようにならないところで生きるには、「どうでもいい」「無関心」では生きられない。いろいろなことをコントロールできる都会は「自然」ではない。「ままならない」=自然も人も同じ。自然に相対する気落ちで人に向き合うことが大切。
・若い人が移住してくれると集落の雰囲気にエネルギーが増す。「安心」「嬉しい」という気持ち。

田口先生
・地域の「見える化」は必要だがそんなに地域は単純ではない。一人ひとりの「底力」が必要で、人間の根源的なところにフックをつける必要がある。
・「地域づくり=楽しくないと意味がない」。地域づくりに関わりながら「顔が穏やかになる」「楽しくなるにはどうしたら良いか」を考える。
・地域とは膝を付き合わせて向き合う姿勢を見せないと村民は胸を開いてくれない。

多田さん
・池谷集落に来て11年目。NPOの代表を務めている山本さん、というキーパーソンの存在が大きかった。集落のために移住者を受け入れてきたわけではなく、新しい人に来てもらうのは自分(多田さん)のためでもある。現在、集落の人は自分よりみな年上で、亡くなる人も多い。
3年の任期のある協力隊は地域に対してある意味、「責任」というものがないが、この先地域に定住するつもりであれば、最後まで「関わる姿勢」を見せることが大切。

その他
・行政リードでなく、地域が主体的に地域づくりにかかわるためには、住民にピンとくる資料の出し方も必要(集落点検の地図など、地図にすることで皆の気持ちがまとまる)
・すべてを行政任せでなく、住民が自分でできること、行政ができること、と課題の棲み分け
・課題を共有し住民をその気にさせるポイント▷ワークショップは3週間ごとに開催し危機喚起をする(それ以上時間があいてしまうと忘れてしまう)

(4)意見交換会 18302030
夕食後、春日さん、多田さんを囲んで意見交換を行った。

1013日(火)
(1)各講師によるテーマ別講演(9001130

春日さん講演テーマ:地域の維持・持続、活性化につながる「小さな観光」
・新潟県柏崎市高柳町出身。1974年より行政マンとして大阪府松原市役所、柏崎市役所勤務、2011年退職。
1983年から本格的に地域づくりに取り組む。住民と行政による協同活動や住民の生き方、働き方、小さなブランドづくりによる農山村滞在型交流観光プロジェクトで地域活性化に取り組む。

◎小さな観光とは
事業者が「自らの暮らしをベース」に、「家業や新たな生業」を興して、「地域を外に開き」、地域住民に加えて「県内外からも旅行者」を迎える、「規模の小さな観光・交流」
例)小規模な旅館、ホテル、café&レストラン、食堂、割烹・小料理屋、蕎麦屋、パン屋、酒蔵等 ※じょんのび村も含まれる
・小さな観光=情緒的体験

◎小さな観光の強み
①消費の「売上7割:地域住民」、「3割:県内外の旅行者」
良いお店や事業者は地域が支える。県内外からの来訪で事業者に誇りが生まれる。
②地域住民が支える▷地域内の「つながりが強く」「雰囲気に温かみ・一体感」
③自分たちの「考え方」「生き方」「暮らし方」を生業を通じて表現▷来訪者の共感、リピーターにつながる。
※地域を象徴する「旗」を立てる=フラグシップ=事業のブランド化
※消費者・旅行者が事業者への理解、共感を得やすい。
④リピーター▷滞在時間が長い▷消費が増す▷経済活動の活性化
⑤事業者は「暮らしをベース」▷「自らが楽しむ」(暮らしが破綻するような安易な事業拡大はしない)「安全・安心感」「幸せ感」

◎小さな観光が地域の維持・持続につながる要因
①小さな経済の新たな流れ
②若い人たちの生き生きとした働きぶり▷魅力的
③小さな観光=「つながる喜び」「持続可能なほどほどの経済」

◎自分よし、みんなよし、地域よし、の循環を作る
個人・事業者・グループ・団体が「自分ごと」として自発的に活動する。
暮らしをベースにした「自分ごと」にする▷地域に大きな旗が立つ(地域のブランド化)

◎マーケティングのポイント
①認知向上 
・ザイオンスの法則(アメリカの心理学者、ロバート・ザイオンス氏)
人は「認知」に至るまで情報を3回見聞きし、「購入・行動」を起こすには7回見聞きする必要がある。

・エビングハウスの忘却曲線(ドイツの心理学者、ヘルマン・エビングハウス)
1か月で情報の80%を忘れ2か月で情報の95%以上を忘れる

・荻ノ島の顧客へのアプローチ
お正月に食べるご馳走を詰めて「ふるさと便」として発売。イメージは「田舎から届く玉手箱」。全国紙の生活情報欄に記事を掲載してもらった▷1300セット完売。消費者からお金をいただいて地元をPRできる

②広報
(情報発信)は1週間おきごとがベスト

③絆を生む(リピーターを増やす)4つの要素
*消費者・旅行者との適度な接触
*消費者・旅行者にとって有益な情報の継続的な発信▷自分にとって有益な情報は信頼と好意が増す
*消費者・旅行者への適切な自己開示▷たまには弱音を吐く「すねの傷も見せているところが高柳の魅力」
*消費者・旅行者への情緒的体験の提供▷あの人に会って良かった、自分がしたい取り組みのヒントがもらえた、話を聞けて良かった。

 ◎まとめ
満足度とリピート度は必ずしもリンクしない
満足度がたとえ低くともその人の「旗」に響けばリピートする▷小さな観光

持続につながるマーケティング
たくさん売る、多くの人を受け入れる<数は少なくても共感してくれる人を受け入れる
共感▷リピート▷ファン▷コアなファン▷応援・支援者

事業者も消費者・旅行者もともに楽しく、幸せになる
顔が見えると温度が伝わる。地域に旗を立て、消費者・旅行者と向き合う。

多田さん講演テーマ:「協力隊任期終了後の生業づくり&ビジネスモデル講座」
NPO法人「地域おこし」のビジョン(事務局長:多田 朋孔、設立20053月)
①池谷・入山を存続させる
②十日町市を元気にする
③日本の過疎の成功モデルを示し日本や世界を元気にする

NPO法人「地域おこし」の事業
①池谷・入山を存続させる=池谷・入山モデル作り事業
②十日町市を元気にする=地域おこし応援事業
③日本の過疎の成功モデルを示し日本や世界を元気にする=地域おこし応援事業

池谷・入山モデル作り事業
・栽培したお米を「山清水米」ブランドでネット販売。
▷組織として営農開始
平成25年度 畑作を試験的に実施
平成26年度 稲作の組織化開始、農業参入手続き
平成27年度 農の雇用事業で農業部門メンバーを雇用

・地域外の人たちとの体験交流
池谷小学校分校を改修して有効活用、NPO法人の事務所・交流の拠点として活用
年間を通じた体験イベント、棚田オーナー制

効果のあった販売手法
①ふるさと納税▷米自体の消費は減っているがふるさと納税の市場は増えている。ふるさと納税✕お米=相性が良い。コストパフォーマンスの良さが魅力。ふるさと納税で山清水米を取り扱ったところ、かつての顧客が戻ってきた。

②youtube配信

・ビジネスモデルの作り方
7種類22分類の型別サービスとお金の流れ図(この分類がキャッシュ・ポイントを生み出すための「型」となる。

 自分のビジネスモデルを図にしてみる▷自分の頭の中が整理される、他人に自分の事業を説明しやすくなる、一緒にコラボする相手を見つけやすくなる、一緒にコラボする相手が具体的になると実際に動いて形にしやすくなる

田口先生講演テーマ:「With コロナ時代における地域づくりと地域おこし協力隊に期待される役割」
◎地域の衰退 地域の担い手減少による個人の負担の増加、総力の減退
▷行政職員の減少、行政サービスの減少
▷過疎高齢化による住民自治の限界

◎地域自治の担い手の多様化
①集落・地域に住みながら地域自治に取り組む ②集落・地域に住んでいないが、頻繁に通いながら地域自治をサポート
③集落・地域から遠く離れて住んでいるが外部から地域の支援をする

◎地域づくりにおける「地域」と「東京」の温度差
地域との信頼関係がないとどんなに課題解決のためのWSを開催しても地域の人々は乗ってこない。
地域→信頼関係を大切にする
東京→オンラインで1回提案しただけで信頼関係が出来ていると思いがち。

田口先生の思い▷柏崎市への共感<荻ノ島への共感(荻ノ島への共感の方が強い)

◎地域おこし協力隊に期待されるもの
・これまで地域になかった視点や価値観
・地域を維持していく上での新しい担い手の獲得
・これまで地域になかったネットワークとの接続▷協力隊が持っているネットワークは大きい。自分の住んでいる地域に自分の友人をたくさん呼んでくる、地域をPRする。

「この地域すごい!」という一人の声▷大勢の声▷集団の声▷地域に伝わると、住民も「自分たちの地域はすごいのではないか」と思うようになる▷地域の人を前向きに変える力がある。

◎地域おこし協力隊と行政職員
協力隊は自分の個性を活かす。また個性を「活かせる」働き方の検討

・活動地域、活動時間、副業、収益

◎地域で活かされる、地域を活かす
「地域で活かされる」とは
・地域との関係の中で協力隊自身の自己実現が図られる ・地域との関係の中で協力隊のスキルが活かされる

(2) 上越あるるん村内「六花の里」 1235-1430  (昼食)

JAえちご上越が「地域の食と農を守り、未来の子どもたちの笑顔につなげたい」とプロデュースした「食と農のテーマパーク」。ビュッフェレストラン「六花の里」にて昼食。今回はコロナ対策もありこの日はビュッフェは中止、ワンプレートのランチを提供するスタイル。

振り返り
講師陣3名のそれぞれの立場から地域おこし、地域活性化の取り組みについてお話してもらったが、特別ずば抜けた地域資源でなくとも、当たり前のようにある地域のお宝をどのように見せていくか、という仕掛けは大切で、そこには住民と行政と協働、さらに、外部人材の活用が欠かせない。小さくとも身の丈にあった事業や交流、観光=自信と誇りの再生・地域の活性化に繋がる「しくみ」が共通していた。何より、その陰には地域への情熱、活動を行う上でのキーパーソンとの出会い、があることを感じた。「モノ」の時代から「こころ」「情緒」の時代への転換期と感じた。