本年度、初開催となったとやま帰農塾「五箇山なぎ畑塾」8/24~26

今年は新型コロナウイルスの影響で、全国的にイベントがすべてオンライン化するなど、これまでにない未曾有の経験をしています。
とやま帰農塾もしかり。本年度、4つの塾が残念ながら開催を見送りました。

そんな中、8月24日~26日にわたって開催された「五箇山なぎ畑塾」。塾長、西さんの「感染症対策など万全の対策を取った上で開催したい」という思いが形になりました。

参加者は関東、関西などから集まった総勢14名。神奈川の大学に通う大学生、大学院生も8名参加するなど20代~70代まで年齢層もさまざま。

感染症対策に加え、熱中症対策にも気をつけながらの開催となりました。

初日は塾長、西さんによる解説付き、菅沼集落の散策です。

世界遺産として知られる合掌集落ですが、その古き建物が世界遺産になっているのではなく、「未だにそこで暮らしを営む人々がいる、その点が世界遺産として認定されている」と西さん。

散策の後は、朱塗りの御膳で郷土料理をいただきながら、日本最古の民謡「こきりこ節」に使われる民具「ササラ」作り体験を行います。

通常だと煩悩の数と同じ108枚の小板からなるササラですが、体験ではコンパクトに72枚の小板を紐で編んでいきます。
講師の先生によると、奈良県の春日大社にもササラは展示されており、その修復を依頼されることもあるのだとか。

いったんコツをつかんでしまえば、あとは地道な作業の繰り返しですが、途中、講師の先生の教えを仰ぎつつ、途中から編み直しになった方も。

例年だと完成した自分だけの「ササラ」を手に、みんなで輪になって「こきりこ節」を踊るのですが、今年はあらゆるシーンで「三密」を避けるためにも
残念ながら踊りはなし。それでも皆さん、自分が編んだ「ササラ」を手に、音を鳴らすなど楽しまれた様子。

こうして初日を終えました。

2日目。
この塾のメインプログラムである「なぎ畑」(焼き畑)体験です。


感染症対策の上に、熱中症対策も重なって、水分補給、塩分補給など、例年以上に対策に追われた今回。

合掌の里から車で移動すること約15分。山の中腹、斜面を切り開いたわずかな土地でなぎ畑作業を行います。
西さんによると、なぎ畑で火をつける時のポイントは「上から下へ」。なぎ畑をやり始めた当初、勝手がよくわからず、下から火をつけてしまい、あれよあれよと言う間に火が一気に山頂目がけて登ってしまい、すわ山火事になるか、と冷や汗をかいた経験があったそうです。

このなぎ畑をすることで、
*その灰が肥料になる
*土中の害虫駆除
*土を酸性からアルカリ性に戻す

などのメリットがあるそうです。

塾生たちの最初の作業はまず、火を燃やすための木の枝を運ぶ作業から。大きな枝、小ぶりな枝などを重ねていきそこに火をつけ燃やしていきます。「上から下」の通り、その火を少しずつ、下へおろしていきます。

真夏の太陽と燃える炎。

見ているだけであの大量の汗が蘇ってきます。

このなぎ畑には西さんの特別な思いがあります。
野菜には在来種というその地に昔から根付いてきた種があります。育てた作物を収穫し、その一番良い作物の種を採取し、その種をまき、また作物を作る。その繰り返しで、その土地に最も合う種を何世代にも渡って受け継いできました。昭和30年くらいまではどの農家も「自家採種」を行っていたといいます。
大量生産できない、均等の形に作れない、などの理由から、生産する人が少なくなってしまいました。一方、私たちが普段スーパーで買う野菜はF1種といって、効率よく農作物が作られるよう改良を重ねた種です。

西さんは、この在来種の赤カブを作るため、毎年なぎ畑をし、自家採種して種を残しているのです。
在来種の赤カブの魅力は何と言ってもその美味しさ。甘みが強くお漬物にすると箸が止まらなくなります。

火をつけた後は、灰になった部分を耕運機でならしていきます。

その上に赤カブの種をまき、灰をかぶせて終了です。

この日のお風呂は格別な気持ちよさでした。


夕食は竹中家でいただく報恩講料理。富山県は浄土真宗が根強く信仰されており、その宗祖、親鸞上人の命日であることから、その恩に報い、念仏を唱える最も重要な行事です。その後にいただくのが精進料理(報恩講料理)で、豆類やイモ、山菜など丁寧に味つけされたものが朱塗りの御膳に並びます。

食事の後は、五箇山生まれの東田晃さんによる「こきりこ節」。
今回は三密対策もあって屋外での舞となりました。竹中家の前で踊る舞はなんとも幻想的。哀愁ただようこきりこ節のメロディを堪能しました。

続く3日目は、郷土料理、五箇山豆腐づくりです。この地に古くから伝わる五箇山豆腐。その特徴は水分が少なく、縄で縛っても崩れないほど身がしっかりと詰まった堅豆腐のこと。なんでも奈良時代、中国から伝わってきたのが発祥で、日本ではそのうち改良が重ねられ現在の柔らかい豆腐に変化したのだとか。

ブロックのように厚みがある五箇山豆腐、その姿は素朴で飾り気のない、男らしい姿。
大豆そのものを味わっているかのような濃厚な甘みが口いっぱいに広がります。スーパーで買う豆腐と五箇山豆腐、同じ豆腐といえども、もはや違う食品と思うほど。


一晩、水にひたした大豆に水を加え、釜で似て、豆乳とオカラに分けます。豆乳部分にニガリを加えて、木箱に流し込み上から石のおもりを乗せて完成です。

その場で作りたてをいただきました。

あっという間の3日間。

今回は感染症対策に加え、熱中症対策もあって、厳戒態勢の中での開催となりましたが塾長西さんの気遣いなどもあって、無事に終えることができました。参加者の方からは「このコロナ禍の中でよくぞ開催してくれました」という感謝の声を多数いただきました。

この先も「with コロナ」「ウイルスとの共存」、を考えると、現在オンライン一辺倒に陥っている様々なイベントも、徐々に「オンラインとリアル」この2つが共存していく時代になることと思います。

五箇山なぎ畑塾ではリアルでないと感じられない、地域の魅力、人の魅力、様々なものを参加者の皆さんには感じ取っていただけたようです。

西さんをはじめ、関わってくださった地域の方々、3日間大変お世話になりました!