グリーンツーリズムとやま6月研究会「地域の特派員を一人でも多く増やすー関係人口が増えるメリットとは?―」が開催されました

地域おこし協力隊や、協力隊の受け入れ自治体、グリーングリーンツーリズム活動などにかかわる方を対象に、「移住」や「地域づくり」「関係人口」について学ぶ研究会が開催されました。

                                                                             

 

講師は、徳島大学総合科学部地域計画担当の准教授、田口太郎先生です。

 

サザンで知られる神奈川県茅ヶ崎生まれの田口先生は、早稲田大学の理工学部建築学科を専攻され、小田原市政策総合研究所特定研究員、早稲田大学理工学部助手などを経て、2011年より徳島大学へ。

 

徳島県の人口2300人ほどの佐那河内村の移住プランを作成したことから、自らその第一号となって中山間地域に移住されました。現在は家族4人で高齢化が進む11世帯の集落で暮らしながら、自宅の一部を開放してイベントなどを行う「住みびらき」も実践しています。地域の草刈りも積極的に行い、消防団など本業以外にもお忙しくご活躍されています。

 

【前半:住民主体の地域づくりと「地域おこし協力隊」の意義】

以下、田口先生がお話された内容をポイント的にまとめてご紹介します。

 

「過疎」は1950年代に使われ始めた言葉で、高度経済成長の時代、都市部の過密、農山村の人口流出が言われ始めた。第三次産業の産地に人口が集まるのは当然であり、日本では人口の約8割が第三次産業の集中する都市部に集まっている。

「地域の衰退とはなにか?」「何が集落をさらに衰退させる圧力になっているか?」・・・例えば農業をやらない人が増えると耕作放棄地がさらに増え、農業従事者に負担が増す。地域での「必要な労力」と「現実の担い手」のギャップ。これが「衰退圧力」の一つになっている。

 

「地域から出ていく理由」・・・最初は、進学などを機に高度経済成長の流れに乗って「自己実現」のためだった。それが、人口減の時代を迎え、「出たくないのに、出ていかなくてはならない」状況に変化した。

「地域の魅力を評価してくれる存在の必要性」・・・地域にはその魅力を評価してくれる人がいない地域に諦め感が出るそこで必要になってくるのが「外の目線」。地域に生きる誇りを取り戻し、自信を持ったうえで、地域課題にも主体的に取り組むことの大切さ。

 

「地域おこし協力隊について」・・・2009年からスタートした協力隊制度。地域おこし協力隊こそ、地元の人が気づかない土地の魅力に気づいて発信してくれる存在。地域づくりのツールのひとつ、と考える。住民の「諦め感」が地域の「諦め感」を作り出す。

 

「自治の再生」・・・目的としての「地域づくり」でなく「結果的に」地域づくりになればよい。多少の遊び心を持ちながら取り組む必要がある。

 

「何も知らないよそから来た若者」の大事さ・・・地域にしたら、移住者が「なんでもできる完璧者」よりも、失敗やダメな部分を持った若者の方が地域の人が支えてくれる。寄り合いでお酒を飲みすぎてハメを外す・・・のも「面倒みてやるか」と思わせるきっかけになる。

 

「地域の温度差」について・・・ひとつの地域で、ずば抜けた地域リーダーがいると、それ以外の地域住民との温度差が広がっていってしまう。その温度差を埋めるのが「地域おこし協力隊」の役割でもある。さらにそのカリスマ的なリーダーがいなくなった場合、一気に地域が衰退してしまう。

 

「協力隊の目指す方向」・・・協力隊自身が「やりたいこと」と「地域の人のニーズ」がほどよくブレンドすることが大切。活動に対し文句を言ってくる人は「興味を持ってくれている人」とも言える。一度、味方につけてしまえば強い。色々な人が参加している感覚、色々な人の居場所を作ってあげることが必要。

 

【後半:移住や関係人口をどう理解するかー移住者、地域、関係人口を考える】

3.11をキッカケに移住ブームが起こる。Uターン、Iターン、孫ターンなど移住のパターンも様々に。

混同されがちな「移住」と「引っ越し」の違い・・・移住は住む場所が動機となって移り住む。地域との接点が大事。一方、「引っ越し」は、仕事が動機となって移り住む。地域との接点の有無などは大事でない。

「地域に入ったら草刈りをやる」・・・どんなに地域に人が移り住んでも、地域活動にかかわってくれない以上、地域の負担は軽減しない。「暮らす」=「一員である」という意識で、移住者は担い手として当たり前のことをする覚悟が必要。

「地域おこし協力隊に対する地域の目は厳しい」・・・税金から報酬が払われている。月額16万という報酬費は地域からすると悪くない金額。彼らを投入したことで明らかな変化が見えないと世間的には厳しい目で見られる。

「地域がアカ抜けていく必要」・・・地域には明文化されていない「暗黙のルール」がある。悪しきルールとも言う(このルールについて田口先生は具体的に言及せず)。そうしたルールは移住者からは指摘できず、そうした暗黙のルールに疲弊されていく。地域住民たちが自ら脱却してゆく意識が大事。

 

「『住みびらき』を実践している田口先生」・・・自宅の一部を開放し、地域の方々に集まってもらうコミュニティの場にすること。田口先生宅の「住みびらき」では、最初、住民の皆さんは、「おっかなびっくり」だったが、移住して3年、ようやく中に入ってくれるようになったという。

 

「移住者同士のかたまり」・・・移住先進地区でありがちなのが、移住者同士が固まってしまい、地域から浮いてしまう問題。地域からは「ますますよく分からない存在」「近づきにくい存在」になってしまう。

「大事なのは移住者の『数』でなく、集落の人々の『笑いじわ』がどれだけ増えたか」・・・田口先生の住む集落では40年ぶりに子どもが生まれたことで住民たちが沸いた。地域に赤ん坊の「泣き声」は重要。

 

「良い移住者とは何か?」・・・「地域を主語」とすると、移住者は「評価」される。地域の目線から「良い移住者とは?」を考える。「地域が元気になる」「地域の暮らしが良くなる」から「良い移住者」を考える。移住者も「ひと」。結局、移住者も「いい地域に住みたい」。そのために「選ばれる地域」になる努力。

 

「田口先生の佐那河内村(さなごうちそん)への移住のプロセス」・・・ご自身が佐那河内村の移住政策を考えたことから、自身がそのモデルの実験第一号として移り住んだ。先生によると、大事なのは「移住する前にどれだけ地域と関係を築けるか」。事前に、自分の紹介文を書いた自己プロフィール写真を配ってまわった。それを読んだ住民から、「この人に会ってみたい!」と思ってもらえるかが大事。言ってみれば地域と移住希望者の「お見合い」みたいなもの。そのプロセスで信頼関係を築きながら実際の移住へと進めていった。

 

田口先生の村への働きかけ「佐那のごちそう便り」・・・地元生産者を中心に生活する村民に光を当てて紹介する冊子。プロのカメラマンが撮影、デザインして村内限定で配布している。村民の間で話題な存在になり、「次は誰が出るのか?」と期待感も高まっている。村が発行しているが、実際に取材して原稿を書いているのは田口先生の奥様。田口先生が、人選のアドバイスをこっそりされることもある。

 

「地域と移住者の関係は『結婚』と一緒」・・・「誰」(地域)と結婚して「どんな」しあわせな暮らしを実現したいか? お互いをよく知る必要、お互いが気を遣い合う必要がある→移住はスタート地点。

 

約2時間にわたる田口先生のお話は、現場に入り込んで地域課題に向き合われている先生ならではの、熱い情熱が伝わってくるお話でした。参加者の皆さんからは「もっと時間があれば、もっと深く掘り下げてほしかった」など、前向きな感想を多数いただきました。膨大なお話を一言でまとめると「移住は結婚と同じ」。この原点を常に忘れなければ、地域側、移住者、それぞれが、どんな姿勢で向き合い、歩み寄ればいいのか、わかりやすくなると思います。

田口先生、今回は、遠路はるばる、貴重な講演をありがとうございました!