実直に、正直な仕事を続けて123年「石黒種麹店」

エリア
砺波・五箇山エリア
目的
直売所・地産地消のお店

味噌やしょう油、甘酒など、日本の食文化に欠かせない発酵食品。そのほとんどに麹が使われています。種麹とは、麹ができる前の、もととなる原料。麹菌の胞子のことで、蒸し米に振りかけると菌が発芽して菌糸を伸ばし、麹が出来上がります。富山にかつて120軒ほどあった麹屋さんは、今では7080軒ほど。富山は、新潟、福島、と全国でも3本指に入る麹県です。

中でも麹の素である「種麹」を扱うお店は全国で10軒ほどしかなく、北陸ではただ一つの種麹店であるのが、この石黒種麹店。江戸中期から麹の製造を始め、明治28年から、一子相伝の製法で種麹を作り続けています。

 

ちなみに種麹はこんな感じ。味噌用、しょう油用、甘酒用、など、用途によって色も違うそう。

 

「麹はどこで買っても同じ、と思っている人も多いようですが、味噌や甘酒、塩麹にしてみると、明らかにその違いが分かります」と、4代目である名物店主、石黒八郎さん。麹について語り始めると何時間でも話が止まりません。麹に使うのは、富山県産コシヒカリの一等米。手作りと機械では、酵素の量が明らかに違うのだとか。あえて、昔ながらの製法で一枚一枚手作りにこだわり続けています。

 

麹蓋にぎっしり詰まった真っ白の米麹を手にした石黒さん。米の11粒に、菌糸と胞子がふっくらと張りめぐり、麹蓋を逆さにしても落ちません。

 

印象深いエピソードをお聞きしました。かつて、味にしのぎをけずる金沢でかぶら寿司を製造しているお客様から、「納品した米麹に発酵していない10粒の米が混じっている」とお叱りの電話を受けたそうです。納めた麹はなんと米200升分。そのうちのたった10粒で無理難題をいわれたのではかなわない。納品を一度は断ろうと思ったものの、こちらも麹づくりに命をかけて向き合っている。どうせなら、完璧な麹を納めてから断ろうと、2週間、麹室(こうじむろ)にこもったそうです。

 

麹菌は、空気、温度、湿度が重要。良質の麹作りには手と肌で微妙に調節する必要があります。石黒さんは、たった10粒の原因を見つけ、工夫をしました。

 

中でも、大きく変えたのが、麹作りの際の「差し替え作業」。夜中の12時、早朝4時、麹室で8段に並べられた麹の詰まった麹蓋の上下を差し替えて、発酵の具合を均一にしました。そうすることで、均一に温度が行き渡り、良質な米麹が造られるのです。「深夜と早朝の作業をこなし、勘を研ぎ澄ませるため、お酒もやめました」と石黒さん。それ以降、完璧な麹を今も納め続けているそうです。

 

店頭では、米麹や甘酒に加え、丁寧に仕込んだお味噌や塩麹なども販売しています。

ちなみにこちらの甘酒。麹がたっぷり使われており、噛みしめながら飲むと、優しい甘さが広がり、少量でも「飲んだ」という満足感が高く感じられる甘酒です。この「昔ながらのあま酒」、この度、南砺市の魅力を最も強く全国発信できる商品として「金賞」を受賞しました。

 「飲む点滴ともいわれる甘酒は、ブドウ糖、オリゴ糖、必須アミノ酸、ビタミンB群、食物繊維など、栄養満点。夏バテで死亡する人を救ったことから、江戸時代は幕府もその効用を認め、法外に値段を高くしないよう、価格統制を敷いたほど」。まさに「命の水」ならぬ「命のあま酒」ですね。

富山の冬の郷土料理「かぶら寿司」にも麹がたっぷりと使われています。日本を代表する菌「国菌」にも認定された麹菌。日本が誇る食文化を支える縁の下の力持ちは、こんな実直な仕事をする職人さんのもとで大切に育まれているのです。

石黒種麹店

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